ソーシャルシリアスゲーム: 2rot13

Social Serious Game: 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

思考実験

前提1.

美術史というものがあるくらいだからごく当たり前の事実として、美術作品は相互に影響しあっている。ある美術作品は、それまでに存在する作品の影響を受けていて、その作品はその後の作品に影響を与えている。影響というと、余計な意味を含んでいるのであれば、作用と表現してもいい。

影響度というのを何らかの方法で算出するとするなら、原則的に古いほど、有名なほど、独自性が高いほど、その影響力は大きい。あなたが今、一つ作品を作ったとして、その作品は現在ルーブル美術館に展示されている全ての作品に対して、一切の影響を与えていない。

現在の画家で、アンディ・ウォーホルを知らないという人はいないだろう。影響を受けているとはっきり言わないとしても、ふと思いついたとしてもキャンベルのスープ缶を描くことはないという点で、それは作用であるといえる。しかし、ウォーホルの作品は、現在ルーブル美術館に展示されている全ての作品に対して、一切の影響を与えていない。影響が時をさかのぼることはない。

ウォーホルがどれだけ有名であっても、その全作品は、あなたがこれまでに目にしたことのある作品のごく一部でしかない。レオナルド・ダ・ヴィンチはキャンベル缶を見たことがないけれど、ウォーホルはモナリザを知っている。あなたが目にしたことのある作家の大半が、モナリザを知っているとするならば、あなたを構成する情報の影響力は、ウォーホルよりもダ・ヴィンチの方が大きいということになる。

前提2.

美術作品全体のプールがあって、美術作品はそれぞれ作用しあっている。影響が時をさかのぼることはない。この環境において、ある作品がそのプールから消えた場合、そのプールは不自然な状態になる、というのは理解できるだろう。例えば、モナリザが消滅したら、モナリザに影響を受けた作品は、一体何に影響を受けたのかがわからない。もっと根源的なことを言うなら、モナリザが存在しないプールがあり、それが十分な時間を経ているなら、ある時点でモナリザが描かれていなければいけない。

前提3.

単体であれば例えばモナリザは圧倒的な影響力をもっているのは明白だが、問題はそう単純ではない。作品のレベルのものであれば、見た目では全く違うものでも、同じ人物が作ったものであればほとんど違いがない。それは、全く見た目の違う人間でも、DNAの99パーセントが同じ、というのに似ている。したがって、モナリザは最後の晩餐で補完される。

作品とは何か。郵便物の受け取りのサインと、現代美術に、何の違いがあるのか。それは、作った人間は知っているし、見た人間も知っている。それはどの程度、脳をハックする力があるか、その一点に尽きる。この文脈において、美術館に飾ってあれば作品ということではないし、道路にペイントされているから作品ではないということはない。作品と、それ以外は、明らかに区別される。レゾネや雑誌やポスターに印刷されたそれは、作品でない。パブロ・ピカソが一本の線を引いたとして、それが作品であるかそうではないかは、明確に違いがある。

前提4.

つまり、あるプールが不自然な状態になる為には、ある一定以上の影響力を持ったある芸術家の全ての作品が、プールから失われなければいけない。古代にはそういうこともあっただろう。しかし、当時は情報の伝達が限定されていたため、プールは細切れで小さく、繋がってはいなかった。プールが世界で一つになり、あらゆる人が何らかの形でそのプールを参照するようになってから、明らかに不自然な状態になったことは、一度もない。

前提5.

ある一定以上の影響力を持ったある芸術家の全ての作品を、プールから消すだけでなく、プールから自分だけのものに隔離することができたら、その人間はそのプールに参加しているあらゆる人間に対して、別次元の優位性を得ることができる。

課題

ある一定以上の影響力を持ったある芸術家の全ての作品を、非公開の状態で独占するにはどうすれば良いだろうか。変数を限定するため、作家は、レオナルド・ダ・ヴィンチヨハネス・フェルメールフィンセント・ファン・ゴッホパブロ・ピカソの四名のいずれかとする。

どうすれば良いだろうか、というのは、言葉の罠だ。自動運転の自動車を作るためにはどうすれば良いだろうか、と考えていては解決できない。ある自動車に、次の行動として、何をするのが最も合理性が高いか、限定された選択肢に重みづけして、最も点数の高いものを選択して動作させる。正解が一つあるのではなく、重みをつけて、一番点の高い行動を選択する。私が、機械学習の実装におけるクリティカルな考え方の価値というのは、まさにこの点だと思っている。

従って、この課題はまず以下のように置換される。

レオナルド・ダ・ヴィンチヨハネス・フェルメールフィンセント・ファン・ゴッホパブロ・ピカソの四名のいずれかの全ての作品を、非公開の状態で独占する為に、最もコストがかからない方法は何か。

この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。