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ソーシャルシリアスゲーム: 2rot13

Social Serious Game: 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

さよなら科学

川久保大道

大学院退学と、アメリカ移住

川久保が大学院を退学し、アメリカへ移住するきっかけとなったのは、二つの出来事による。

論文のオーサーシップ

川久保は研究室で、エーテルを中心としたインターフェースの研究を行っていた。川久保はその分野においては、その時点で少なくとも国内の頂点の一角だったが、当時川久保は単なる博士課程の学生で、当然博士の学位も未取得であり、既存の研究室への参加とはいえ自分の研究を行うのは██大学においては特例といえる待遇だった。

研究を論文としてまとめ、科学誌に投稿する直前、責任著者となっている研究室の教授から、新任の准教授を著者に加えるという指示が行われた。准教授は執筆に関わっておらず、完全にギフトオーサーシップの事例である。
オーサーシップの問題は、現在でも、不正としての順位が低い。一般に、最も問題とされるのが、捏造・改竄で、次が剽窃・複製・二重投稿であり、最後にオーサーシップの問題となる。これは、様々な不正行為が明るみになり、対応が進められている現在でも変わりはない。
川久保は、オーサーシップは科学が成立する為に最も重要であると考えていた。人間の行為には、そもそも、間違いが起こりうる。科学はそれを前提としていて、その為に論文として発表して多くの目に触れて検証されることで、主張に価値が生まれる。その為には、その論文が誰の責任で書かれたのか、誰がその内容を検証したのかということが明らかになっていなければやり取りのしようがなく、オーサーシップが適切でなければ、捏造や改竄の検証のしようもない。したがって、オーサーシップに関する不正は、捏造・改竄、剽窃・複製・二重投稿よりもはるかに重要度の高い問題であると考えていた。

当然、川久保は全く研究に加わっていない准教授を著者に加えることを拒否した。しかし、少なくとも██大学においてはそれは非常識な行為であったため、その結果、一旦投稿は見送られることになった。川久保は、不正を大学内のコンプライアンス窓口に告発したが、前述の通りオーサーシップに関する不正は重要度が低く、また、大学内ではそれがまかり通ってきた歴史があるため、全く対応はなかった。

██大学に限らず、そして国内だけに限らず、オーサーシップに関する不正は広く行われている。しかし、オーサーシップに関する不正は、扱いが低く、一向に改善されることがない。これは、あまりに蔓延しているため、誰も指摘できない状態にあるためである。川久保を支持する、一部の職員の手引きにより、川久保は教授会に忍び込み、「こんなことが許されるなら、科学の世界は、誰が書いたのか分からない、再現するかどうか分からない文章を参照しあう、2██(インターネットの掲示板)以下のクソだ」と叫び、停学処分となった。

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