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ソーシャルシリアスゲーム: 2rot13

Social Serious Game: 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

血液脳関門と感覚脳関門、古代人類と現代人類、アルコールと抗うつ薬、芸術と

「芸術の頂点ともいえる君にこんなことを質問するのは、失礼なのかふさわしいのかわからないけれど」

確かに、ある意味では頂点だったのかもしれませんね。

「だった」

目が見えなくなるまでは。今は何の価値もないただの美しい女性ですよ。

「人間の価値については哲学なのでなんともいえないので割愛するけど、ちなみに、全く絵は描けないの?」

私の作風は、技巧を尽くすスタイルなので。キース・ヘリングの様なスタイルだったら、或いはトレーニング次第でどうにかなったのかもしれません。

「なるほど。じゃあ、キース・ヘリングの様なスタイルだったら、僕はこうして君に会いにに来ることはなかっただろうね。それはともかく、」

質問

「そう。芸術とは何だと思う?」

芸術とは。もちろん私の中に答えはありますが、哲学なので、きっとあなたの持っている答えとは違うんでしょうね。だから割愛します。あなたの持っている答えは、おそらく科学的なものです。話を進めてください。

「君は極めて頭が良いので、この件が片付いたら何か新しいことを始めるといいよ。その通り。我々の『芸術』には、科学的な定義がある。それは、感覚における脳の関門をハックするものだ」

「血液と、脳の組織液の間には、血液脳関門という関門がある。これは、血液から脳に想定外の物質が運ばれることを制限するためのものだ。通過できるものは、例えば脳のエネルギー源であるグルコースだ。関門は、コンピュータネットワークにおけるファイアウォールのようなものだね」

「しかし、ファイアウォールと同様、適切ではないのに通過してしまう物質もある。例えばアルコール。これは、古代人類が行ったハッキングといっていいね。現代人類が行ったハッキングは、例えば抗うつ薬だ」

「あらゆる感覚についても、同様に、ファイアウォールが存在する。これを感覚脳関門と呼ぼう。芸術は、アルコールと同じように、感覚脳関門を通過する。そして、アルコールと同じように、脳に影響を与える。といっても、アルコールとは違ってほんの少しだ。もっと露骨な、バグといってもいいレベルのものが、てんかんだ。てんかんはまさに、ニューロンがクラッシュする訳だからね。君の偏頭痛の薬は、マ████だよね。閃輝暗点は?」

ありますね。

「君の頭の中の血管が異常に収縮し、異常に拡張しすることで君の視覚に異常が発生し、偏頭痛が起こる。血管の収縮と拡張という非常に物理的な原因で、存在しないものが見えるわけだ。もっとも、これらは人間が意図的に行ったクラックではない。てんかんと同じように、バグだよね。ハッキングに話を戻すと、アルコールと同様、古代人類が関門をクラックしたのが、芸術だ。芸術もアルコール同様、いまでも作られている」

「さて、血液脳関門は、古代人類がアルコールでハックし、現代人類が抗うつ薬でハックした。そして、感覚脳関門は、古代から人類が芸術でハックしていたわけだけれども、」

同じように

「そう。同じように、現代人類、つまり我々のラボでは、感覚脳関門をハックすることに成功している」

この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。