読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ソーシャルシリアスゲーム:東京、ロンドン、ハノイ、台北、パリ、ニューヨーク 2rot13

Social Serious Game: Tokyo, London, Hanoi, Taipei, Paris, New York 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

ドーナッツ

ふと思い立って人を殺すなら、包丁がベストだ。比較的手に入りやすくて、刃に幅があるから十分に殺傷能力がある。小さめの出刃包丁か、牛刀がいい。手に入るなら、拳銃でもいい。ボロニウムやVXガスが手に入るならもちろんそのほうがいいけれども、その殺人はおそらく、君の意思ではないだろう。
包丁や拳銃は、紙袋に入れるといい。ミス█ー█ーナッツの紙袋だ。持ち歩いていて不自然ではないし、大きさもちょうどいい。誰だってドーナッツが入っていると思う。人ごみで袋に手を突っ込んでも、周りの人はドーナッツを取り出すんだろうと考える。悲鳴か銃声が鳴り響くその瞬間まで、誰も手に持っているものが人殺しの道具だとは思わない。袋に入れたまま刺すことも、撃つことも出来る。
もちろん、買ってそのまま、ドーナッツも入れておく。ここで重要なのは、ドーナッツの選定だ。間違っても、ココナッツなんて選んではいけない。粉だらけになるからね。無難なのはシュガーファッジの█ンデ█ングだ。おいしい。少しべたつくけれども仕方ない。包みを開けたら、包丁や拳銃を下に入れてペーパーナプキンと薄紙をかぶせておく。万一職務質問されて中を見せても、ドーナッツしか見えない。食べ物の袋に彼らが手を入れることはないし、そこまで疑われていたらそもそもどうしようもない。
ここまで注意したのに、彼は一番大事なところでやらかした。ぶっ殺すその瞬間、袋からドーナッツを取り出してしまった。彼はドーナッツを取り出して相手に向けた。怪訝な顔をして、相手はドーナッツを受け取った。自分の指をなめて、彼はこう思った。ツメが甘い。

そこには二つの可能性があった。袋から取り出されるものが包丁であると言う世界と、袋から取り出されるものがドーナッツである世界。取り出した瞬間に二つの選択肢は消滅し、一つの世界に収束する。

広告を非表示にする
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。