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ソーシャルシリアスゲーム: 2rot13

Social Serious Game: 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

エーテル - W███████a

エーテル

エーテルは川久保大道が開発したロボット操作用インターフェースである。OSS版が公開されており有志によってメンテナンスされている他、川久保の所属するN█SAでも利用されている。

概要

腕に装着した生体電位センサから取得したデータを、深層学習によって分析し、ロボット操作のシステムに入力する。ロボット操作システムからのフィードバックは同様に、深層学習によって変換、電子情報により神経にフィードバックする。ロボットからのフィードバックは単にマニピュレータの動作だけではなく、アクティブソナーからの情報など深度を持った視覚的な情報を含むため、触覚と視覚をあわせた感覚となる。センサ及びフィードバック用のデバイスは、頭や首ではなく腕に装着する点が特徴である。

成り立ち

川久保は趣味でロボットを作っていたが、様々なコントローラーが乱立しておりどれも使い勝手が悪かったことから、自作を始める。最初に作成したのはフィードバックグローブであり、手の動作をシステムに入力し、システムから動作をフィードバックすることが可能な単純なものだった。しかし当時の安価なサーボモータは出力が小さく、また、グローブは巨大になったため、川久保はシステムへの入力を筋肉の電圧を読み取る方式に変更した。
当時、筋肉の電圧を測る場合、ノイズが大きく実用性が低いという問題があったが、この問題を川久保は深層学習の仕組みを利用して解消した。単なる電気信号の量ではなく、パターンを解析して脳が発した意図をデコードするという試みである。この仕組みのため、エーテルを使用する場合は学習(機械学習)が必要になる。学習の工程を校正と呼ぶ。また、センサで取得したデータから脳の意図をデコードするという意味で、この解析の部分の仕組みをデコーダと呼ぶ。従って、構成は、人間から入出力する装置、デコーダ、操作されるシステムとなる。後述するが、このデコーダが分離されたことが、このシステムにとって重要な点である。
デコードの仕組みは極めて有効に作用し、システム上の手のモデルは完全に動作した。この時点でマニピュレータのインターフェースとしては完成である。しかし、川久保は校正を繰り返しながら動作検証を進める中で、実際に手を動かさなくても入力が可能であることに気づいた。入力の精度と比較してフィードバックの完成度が低く、実際の触感とは明らかに違うことも、別の手を仮想することに対して功を奏したといえる。この結果、エーテルは二本の腕とシステムの腕が完全にシンクロしたコントローラーから、元々の腕とは別の、3・4本目の腕へと変化した。
仮想の腕は、どこまでも伸ばすことができ、どこまでも広げることができる。川久保はこの腕のフィードバックに実際の腕のフィードバックは適切ではないと考え、フィードバックも電気的に行うよう変更した。また、単に仮想マニュピレーターの情報をフィードバックするのではなく、他の情報を送ることもできるのではないかと考えた川久保は、アクティブソナーの情報を追加し、動作に成功した。このことで、エーテルは手でも目でも皮膚でもない新しい器官となった。
並行して、仮想の器官である以上、電気信号の取得を腕で行う必要はないと考えた川久保は、首や頭につけたセンサからの入力を加えたが、なかなか成果が出なかったため、きっぱりと諦め、腕でのセンスとフィードバックの精度向上に努めた。SFでは脳を電子機器に置き換えたり、脳にプラグをつけることで人間を拡張するが、エーテルはあくまで器官の追加であり、脳にプラグは必要ないと割り切った。この決断がブレイクスルーを可能にしたということになる。「人類がサルから進化して自由になった二本の腕を活用すべきなのはヒトとして自明だった」と川久保は述べている。ただし川久保は「カニでも良かったんじゃないか」ともコメントしている。
デコーダが独立していることで、センサやフィードバックシステムを変更しても担うべき役割は変わらないため、ヘッドマウントディスプレイやフィードバックグローブを併用しての学習を行うことができる。構成が完了すると、最終的には貼り付けたセンサのみでシステムへの入力が可能である。
校正が適切に完了し、その人に合った学習データができると、エーテルを通じて「見る」ことができるようになる。これは視覚とも触覚とも違う感覚であり、エーテルをインストールされていない人間に理解することは原理的にできないし、各人で共有することもできない(クオリア)。一般に、校正が進むに従って、触覚に近いものから視覚に近いものに変化すると言われている。

インストールの手順

以下は、公開されているOSS版のインストールの手順となる。またOSS版を元に開発されている企業や研究機関のものも基本的には同一である。N█SAで使用されているシステムは非公開のため詳細は不明だが、公開されている映像によれば大きな違いはないと考えられる。ただし、精度は大きく異なる。

ユーザに合わせてセンサとフィードバックシステムを作成するため、3Dスキャン、レントゲン撮影、電気的な反応のテストを行う。そのデータを使用し、3Dプリンタで出力を行い、ハードウェアを作成する。
センサを取り付け、コンピュータと有線で接続し、ヘッドマウントディスプレイによる視覚情報の入力、フィードバックグローブによる動作の取得と同時に、電気的な反応を取得する。取得したデータを深層学習で学習する。「校正」の工程である。機械学習の特徴である非対称性により、学習には多くの時間とマシンパワーが必要となるが、学習後にデータを使うにはコストを必要としない。
校正が完了したら、学習済みデータでデコーダを構成する。デコーダは、物理的にはセンサ側に実装することで、デコード済みのデータを無線でロボット制御のシステムに送ることができる。そのため、チップに書き込みを行うことが一般的である。ユーザー側のデバイスに実装しない場合は、有線接続のまま使用することも可能であり、その場合はデコーダは接続されたコンピュータに実装される。

校正について

前述の通り、校正にはヘッドマウントディスプレイやフィードバックグローブを使用するが、川久保は原理的には単体で可能であると述べている。乳児が、触覚や視覚を理解するのに目や皮膚などの器官単独で可能なように、エーテル単独での校正も可能だろうということである。ただし、乳児が、センサの学習の段階で触覚や視覚や聴覚を組み合わせて入力することで学習の効率を上げているのと同様に、エーテルに関しても視覚や触覚との併用が効果的であるのは間違いない。

利用の用途

大々的に利用されているのは、N█SAでの宇宙開発でのロボットや宇宙船、マニピュレータ等の制御である。民間企業では工事用重機や、ロボットの操作に活用されている。

課題

OSSとして公開されて██年が経過しているが、新しい機能は搭載されていない。
エーテルはこれまで述べた通り、川久保大道個人のプロジェクトであったが、N█SAへの移籍と同時に川久保自身はOSS版から離れている。エーテルの有用性には多くの研究機関や民間企業が着目し、研究を進めているが、精度向上以外の成果は上げられていない。川久保も述べている通り、このシステムに新しい仕組みや難しい仕組みは存在せず、既存の技術の組み合わせである。従って、公開されているものを元にしてN█SA同様の精度のデバイスを作ることも、画期的な新機能を搭載することも同じ条件で可能であるが、目立った進化はない。ただし、重機やロボット操作の分野において普及は大きく進んでいるため、元々の完成度が高かったと捉えることもできる。

この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。