ソーシャルシリアスゲーム: 2rot13

Social Serious Game: 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

Ego cogito, ergo sum, sive existo

「私たちには、時間がありません。本当に、ちょっとしか時間がないんです」

私たち。

「私。私に時間がなければ、私たちという概念にも時間がないですよね?」

そうですね。

「ですから、まずこれから、最低限の説明をします。いいですね。あなたの知らないことは多く、私たちには時間がないからです」

無知でごめんなさいね。

「もし仮に、あなたが日本で医学と化学と生物学と物理学と数学の学士と修士と博士を持っていたとしても、状況はほとんど変わりません。これから話す最低限の説明は、公開されていないものだからです。アメリカ合衆国の公開されていない科学は、世界より数年進んでいます。ノーベル賞が確実なレベルの発見のストックがいくつもあります。例えば、少なくとも二つ、相対性理論クラスの未発表の物理法則を抱えています。これがいかに大変なことか、想像するのも困難です。科学は比較的オープンな世界だし、優秀な人材は有限です。そして、なにより、研究で成果をあげるのが誰かなんて、事前にはわからない」

「しかしその価値はあります。発見は発見を呼びよせます。この公開されていない科学の行われている研究所には名前がありません。ここでは、ラボとしておきましょう。ラボでは、100番台の元素が常用されています。超重元素は、宇宙に通常存在しないから重要ではないと思われていますが、逆です。自然に存在するものでは、到達しない世界があります。ほんの□年前には、人類はラジウムを精製することができなかったんですよ。元素は不変だと考えられていたままだったら、元素は成立しません。あなたは超重元素の使い道をいくつ挙げることができますか?」

超重元素がわかりません。

原子番号が大きい元素です。超重元素の話はひとまず置いておきましょう」

なぜ公開しないんですか?

「戦争に使えるかもしれないからですよ。それが全てです。あなたは、原子爆弾が開発されている時、その存在を知っていましたか? 生まれていないですよね! だから、想像してください。でも、大丈夫。最低限の説明で、十分です。なぜなら、それは科学的な事実だからです。誰がどう言おうと、地球は太陽の周りを回っているように、事実はただそこにあります。確認する方法を考える能力さえあれば、事実はいつでもただあるんです」

わかりました。

「よかった」
「では、まずはニューロンについて説明します。脳の、ニューロンです。ニューロンは、一つ一つ、それ自体が生命です。電気を食べて生きている生き物です。電気を食べて生きる生き物は珍しくありません。バクテリアにそういうのがいるし、そもそも生き物は、最終的には電気で動いています。重要な点はそこではありません。ニューロン一つ一つが生き物であるということです。つまり、人間は一つの生き物ですが、単に現象であるともいえます」

「意識とは何だろうと考えたことはありますか。すごくドライに捉えれば、人間は単に化学変化です。そうですよね。私たちは、腐敗するオレンジと本質的に何も変わりません。化学変化です。しかし、私は私の目から世界を見るし、あなたはあなたの目から世界を見ます。入れ替わることはありません。私という意識が幻想だとしても、私はあなたと入れ替わることがありません」

「しかし、人間の脳が複数の生き物で構成された現象であるとなると、さらにヘビーですよね。肉体は機械で、脳は複数の生き物となると、私の意識はいったい何なんでしょう。Ego cogito, ergo sum, sive existo」

「そうだ」

何ですか?

「日本語で話をしましょう。僕の名前は川久保大道です」

私の名前は高橋花です。

「それは?」


偏頭痛の薬です。


「それは良かった。多分、少し、話が早い」

この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。