ソーシャルシリアスゲーム: 2rot13

Social Serious Game: 2rot13 この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。

Fig. 1. 『感覚脳関門』のGoogleでの検索結果

『感覚脳関門』の語の新規性について、Googleの検索結果で確認する(Fig.1).

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Fig. 1. 『感覚脳関門』のGoogleでの検索結果

Google. Available at: <www.google.co.jp> [Accessed 29 March 2017].

Table 1. 血液脳関門と感覚脳関門の比較

血液脳関門と感覚脳関門についてTable 1で比較する.

Table 1. 血液脳関門と感覚脳関門の比較
血液脳関門感覚脳関門
関門の位置血液と脳の組織液の間神経とニューロンの間
正常な物質グルコース通常の感覚の情報
古代からのハッキングアルコール芸術
現代のハッキング抗うつ薬『ラボ』で行われる新規領域

ソーシャルシリアスゲーム

悪くないゲームだ。正直、1000万ドルくらいなら支払ってもいいくらい、魅力的なゲームだ。

ソーシャルシリアスゲーム

まさにその通り。でも、多分、彼の考えているゲームと私の考えているゲームは違う。楽しんで、と彼は言った。もちろん、私はそうするつもりだ。

汝は人間なりや?

目先の問題を考える。

私は、これまでずっと一緒だった手首から先を失う手術を受けながら、目先の問題について考えている。

『絵が生まれたのがxxxx年だというのは何故分かったのか』

何故分かったのか。彼の言ったことを事実だと仮定するなら、ここには二つの事実がある。絵が生まれたのがxxxx年であるということと、それを彼らが分かっているということだ。私の質問は、『何故xxxx年なのか』ではない。つまり、『どうやって調査したのか』ということになる。

ある絵がある集団にある時点で発生するとする。絵が、社会の構成者に対し十分な割合で目撃されるとしたら、その時期を絵を確認せずに、後日推定するにはどうすればいいか。

サンプリングだ。ある集団から定期的にある人数づつ、別の閉鎖環境に移動する。閉鎖環境内に絵が移動することがなければ、絵を見たどうかの事実と人間を閉鎖環境内に移動した時期を調べれば、絵が発生した時期を推測することができる。

彼らには強大な権限がある。おそらく、基本的には何でもできると考えていい。

問題は、絵が発生するのは事前にわかっていないからサンプリングを開始することができないという点と、ウィルスの感染を調査すると対象者は死んでしまうという点だ。この二点を考えると、彼らが行った調査は推測できる。

彼らは、刑務所で調査を行ったんだろう。死刑囚だけではサンプル数が少ないからおそらく終身刑と死刑の人間を対象に。それでもサンプル数は少なすぎるように思うけれども、逆に、それだけ多くの人が絵を目にしていたということになる。外見では判別できない、ハックされた人間。

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世界観

① 子供の頃、宗教というのは、混沌や無知で満ちた箱の穴から真理を覗くものだと思っていた。それは宇宙を知るのと同様に、自分を含む世界の成り立ちを知りたいという欲求だ。

② 大人になって理解した宗教というのは、世界が虚無であるから自分で箱をかぶって、デマでもいいから何らかの価値観を共有するということだった。合理性と効果はあるが、そこに理性はない。ヘロインを常用して多幸感を得て何も考えないのと違いはない。

③ 大人になっても①だと思っている人間は、妄想状態かカモだ。カモには他人が箱をかぶせる。かぶってもらわないといけないので、箱は素晴らしいものに見える。他人が他人を利用しようと作った箱なので、実際に利他的である。

④ 箱をかぶらないなら、自分で価値を創造しなければいけない。私は人生で何をすべきだろう。自分で定義した価値に②の箱と違いがあるんだろうか。④は、①~③に比べてコストが高く死に至りやすい。遺伝的アルゴリズムにおいて④が残らず宗教が残るのは、国家が運営できる程度に合理性がある。

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「感覚脳関門へのハッキングでは、フィードバックを計測しながら数日間かけて、例えば、右目と左目には別の入力を行っている。人間の感覚というのは、原始から常に入力され続けているから、血液脳関門よりさらに強固な関門が進化によって備わっている。そうでなければ簡単に壊れてしまうからね。というか、簡単に壊れてしまった人間が遺伝子プールから排除されたというべきかな。何にせよ、感覚脳関門は極めて強固だ。それを、一枚の絵が成し遂げているわけだから、これは凄まじいことだよ」

感染しているかどうか判断する方法がないのに、何故調査を進めることができたんですか?

「ちょっとグロテスクな方法なので割愛するけれども、感染しているかどうかは診断できないけど、感染していたかどうかは判別できる」

していたか。

「そう。診断すると、死んでしまう」

死んでしまわないように判断することはできない?

「今のところ、できない」

なるほど。じゃあ、私も感染しているかもしれないですよね。

「していない」

「絵が描かれた――描かれたどうかはわからないから、発生したとしよう、――発生したのは████年で、その時点では君は既に失明している。君には見ての通り両方手首から先がついているから、『手首を切断する装置』でエーテルに接続して感染した可能性もない。だから、100パーセント感染していない。僕が君に絵を探すのを依頼したい二つの理由の一つは、君が100パーセント感染してない人間だからで、もう一つの理由は君が現存する最高の芸術家だからだ」

████年だというのは何故分かったんですか?

「何故分かったと思う? これは、考えれば、答えはいくつか出るはずだよ。君はこれから沢山考えなければいけない。ウイルスは、『手首を切断する装置』でエーテルに接続してから48時間で感染する。だから、君は48時間以内に絵を見つけなければいけない。48時間経ったら、君は100パーセント感染してない人間ではなくなってしまう」

「これはゲームだ。君は参加費として、手首から先と、エーテルをインストールするための数日間と、接続してからの48時間を支払い、参加の報酬として目に代わる、圧倒的に価値のある器官であるエーテルを手に入れる。ゲームに勝てば、君は失ったものを全て取り戻し、芸術の世界の女王に復権する」

「さらに、ゲームの目的である一枚の絵は、感覚脳関門への影響の大きさから想像するに、芸術の最高峰であることは間違いない。少なくとも、人間が誕生してから今までに生まれた『芸術』の中で最高のもので、今存在する全ての作品の力の合計よりも力がある。これを『目にする』ということは、それ自体、君にとって価値のあることだと思うよ」

「これはゲームだ。それも、最高のゲームだ。完全情報ゲームみたいに、ベストな打ち筋を暗記する遊びではないし、アメリカの推理もののTVシリーズみたいに引き伸ばしで結論が先送りされることはない。社会性があり、関係性があり、真剣に推理する価値があって、確実にゴールがある」

「ソーシャルシリアスゲーム。楽しんで」

感覚脳関門をハックしてもたらされる変化 2

「二つ目は、安定だ。安定に対する拒否をキャンセルする」

例のウイルスと同じですね。

「その通り。というか、一つ目も同じなんだ。どういう順番で説明すればわかりやすいのか分からないんだけど、それをウイルスと表現したのには理由があるし、我々のラボでのハッキングとの共通点も違いもある。まずラボでのハッキングの話を進めるよ」

「我々のラボでの感覚脳関門へのハッキングは、五感のうち視覚と聴覚と触覚から行う。数日間かけて、フィードバックを観測しながら、適切な刺激を入力する。それから、ハッキングした人間数人を閉鎖されたエーテルに接続する。すると、彼らは一つの知能を構成するようになる」

「そのエーテルにハッキングしていない人間を繋ぐと、その人間は通常のエーテル同様情報のやり取りが可能だけれど、一つの知能には加わらない。それは妥当な結果だと思う。我々のラボでの感覚脳関門へのハッキングは個人毎にチューニングされたアタックだから、その感覚を共有しても壁は壊れないんだね」

「前に言ったとおり、公開されていないエーテルは、実験段階でありながら、実用も行われている。例えば、世界上位10人の――あえて言うけれど――プログラマは、エーテルに接続して開発をしている。ディスプレイとキーボードでは到達しない世界に彼らはいるからね」

「だから、そういった実用的な閉鎖網とは別に、実験は常に行っているんだけれど、あるとき、1人もハッキングした人間を繋いでいないエーテルで、参加者のうち数人に『群知能化』が発生した」

「このインシデントは、二つの事実に分解できる」

1、我々がハッキングしていない人間が、ハッキング済みだった。
2、ハッキングが別の数人に感染した。

エーテルは感覚を共有するから、感覚脳関門へのハッキングが伝わる可能性についてはもちろん考えていた。でも、感覚脳関門へのハッキングは、各個人のフィードバックを測定しながら個別にチューニングして数日間にわたって行うものだから、それ自体を共有しても別の人間の関門が破壊されることはありえないという結論になった。それが発生したということだね。このインシデントが発生してから今までの我々の検証を時系列で追うのは、あまりに時間がかかりすぎる。だから結論だけ言うと、事前にハッキング済みの人間は共通して一枚の絵を見ていて、それが彼らをハックしたということだった」

この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。